邑南町の「地区別戦略(通称、ちくせん)」に対して、中間支援という形で関わっている立場からおもしろいと思うことをいくつかピックしてみる。
■地域からの法人設立
自治会など地縁型組織はこれまでの自治会活動や地域のお祭りなどの伝統行事などをこれからも継承していくこと、住民の暮らしを守る役割がある。
他方で、地方ではいまや地域としても、小さな経済を作り、稼ぐことを考えるべき段階に入ってきている。
この背景には、地方自治体の財政が厳しい状況があり、これまでは補助金などで地域活動を促進する方法などを取ってきたが、今後その見通しが厳しいところがあるため、まだ動ける、投資できる今のうちに地域においても稼ぐ体質、試行を求められているから、とみています。
しかしながら、自治会などの地縁型組織はこれまでそうした稼ぐ、という行為をしてきていないし、そのための組織でもないということがあり、何とか小さな経済を作らねば、という危機感の強い住民を中心として経済事業を行える法人設立がいくつか見られます。
1)組織の形態
邑南町で設立されている法人の種類は大きく2つ。
1つは「合同会社」でもう1つは「一般社団法人」。
合同会社については、邑南町内でも先駆的な取り組みをすることで知られ、リスペクトをされている出羽(いずわ)地区が、他地区に先駆けて数年前に「合同会社」を設立していたことから、先進事例に学ぶ、というところから選択されているのかなという気がしています。
社団法人については、中間支援で入っている僕たちの会社がこの法人格を選択しており、僕たちとしても、地域の目的等を聞いて将来像を共有しながら最適と思う社団法人をおすすめしてきたところもあります。
2)事業内容
法人設立したところがどんな事業を展開しているか。
①観光・宿泊事業
②飲食、食品加工事業
あたりです。
観光・宿泊だと、古民家をリノベして一棟貸しタイプの宿泊事業を展開している日貫(ひぬい)地区の
日貫一日・安田邸、一揖。
ここはアルベルゴ・ディフーゾの考え方を知り、兵庫県篠山市の取り組みなどを学んだ上で事業展開している。
今年は新型コロナの影響で前半は厳しかったが8月は31日のうち25日予約で埋まったという。
こういう状況なので、一棟貸し切りで泊まれる宿というところに安心感や期待値があったのだと思います。
飲食、食品加工だと、市木地区のそば店「ふくのや」や、田所地区の「おおなんカレー」がある。
ふくのやは色々な事業展開をしていて、今は週末営業のみと聞いてる。
おおなんカレーはこうした地域振興という流れから生まれてきた商品としては異例といっていいくらい美味しくできあがっている。
田所地区にある「道の駅みずほ」の中にテナントとして入っている「コトコト」でも、このカレーを楽しむことができます。
ちなみに、このカレーは樋渡啓祐氏のところにも届いていて、好評のようです。
3)新設法人の課題
ここ(課題)は難しくて、新規設立されてまだ3年とかなので、評価するには実績が不足してる状態。
とはいえ、いくつか課題感を感じいてるので、整理しておきたいと思います。
① 組織運営の熟度
組織運営としての熟度がやはり低いです。
意思決定のプロセスや目的の共有、手法に対しての価値観のすり合わせなど議論の仕方などにも課題はあります。
② 収益性の向上
地域発の法人だと、必ずしも利益優先とはならない、できないというのも現実としてあります。
会社だけの利益を考えるとAの方が条件は良いが、Bの方が地元に寄与するので、Bにしましょうか、みたいなことは往々にしてある。これは悪いことではないし、むしろ地域への波及効果としてはその方が良いのだけど、、、
法人化した後の難しさはこの辺にあると感じています。
というのも、本来地域への貢献、寄与、経済効果の波及などをねらって設立する法人でも、一度法人化し、経営が始まると、目の前の得を捨てて、法人単独で見れば損を取る、ということができるかできないかということになります。
③ 人員不足
法人化すると経理や事務仕事が出てきます。規模は小さくても雇用をすればまた事務手続き。
こうした経理事務を担う人材は慢性的に不足しています。
これは、経理、事務というバックオフィス業務に人を一人貼り付けるだけの資金的余裕がないから。
ここは、実は新設法人同士で連携して一人の人材をシェアすればいいんだが、とは思います。
ということで、今回の”ちくせん”を通じて見えるものは置きたいと思います。
続きがまたそのうち、書けるといいなー。