2013年12月15日日曜日

地方で世界と戦う企業のリーダー育成|イワミ村田製作所の場合

島根県大田市(おおだし)で今秋に開催された「みちくさ日和」の最後のプログラム「社員食堂潜入!イワミ村田製作所」に参加したことをきっかけに、イワミ村田製作所の社内ワークショップ(WS)を見学させてもらいました。このWSは、社内のリーダー研修として開催されました。


私のシゴトは普段、中山間地域等のコミュニティやNPOとともにしているのですが、コミュニティやNPOにとってもリーダー/人材育成は重要な課題となっています。

地域活性化に関するWSは経験がありましたが、民間企業の社内向けWSに参加することは当然ですが未経験でしたので、コミュニティに視点を置いているWSとどこが共通していて、どこが異なるのかといったことに関心を持ちながら見学しました。

ある意味、初めての取材体験のような感じです。


ワークショップの概要

このWSはイワミ村田製作所のリーダー研修として開催されたものです。

参加されたリーダーはざっと見た感じで20代前半から30代を中心に40代くらいの方まで20人くらいの参加でした。また、予想していたよりも女性が多かったです。

1つのテーブルに4~5人単位で別れて4つのテーブルで構成し、ファシリテーターから示されるテーマごとに個人ワークとグループ・ワークを繰り返します。

朝から夕方まで、丸一日かけて実施する研修で、年に1回ほど開催されているようです。このリーダー研修の他、課長・係長級を対象とした研修や全従業員を対象にした研修もあるそうです。

なお、普段の職場の雰囲気、関係性をできるだけ意識しないようにファシリテーターもリーダーも私服で参加されています。



ワークショップを見学してみて

私は今回、途中から会場に入って見学しました。会場に入ってすぐは、明らかに異質な私がいることで邪魔にならないかな?と心配しましたが、ファシリテーターの方から紹介いただき自己紹介も簡単にしたので大丈夫でした。それと、拍手で迎えていただいてほっと安心しました。

リーダー研修ということなので、参加されている方はみなさんリーダーという役職に就いている方なんですが、聞けばつい先月就任された方もいれば数年のキャリアがある人もいるということでした。


見学していてまず気づくのは、リーダーになっている方々であるためかWSに対しても積極的に参加されていることでした。冷えきったWSを経験することもあるので、こうした前向きな雰囲気が作られているのはいいですね。何しろ、笑顔、笑い声が出ていて楽しそうな空間になっていました。

あとはWSを見ながら聞きながらメモしたことを箇条書き。

  • お客様の声の現場へのフィードバック
  • 上下のコミュニケーション
  • 自分でやったほうが速い病

キーワード的には、

  • 感謝
  • 協力
  • 自主的
  • 相談できる関係性
  • コミュニケーション
  • 責任感
といった言葉が意識されているように感じました。

お客様の声を現場にフィードバックすることの重要性は、直売所でも同様だなと思います。野菜を作って出荷する人は、それを買ってくれる人がどんな笑顔で買って帰るのか、またどんな期待をしているのか意識すれば次はもっと良くしよう、もっと良いものをつくろう、となります。加工品も同じく。
金とは違う部分で、やはり「感謝される」とか「喜んでもらえるよろこび」といったことはモチベーションに大きな影響を及ぼします。


“ちょうどいい”イワミ村田製作所の規模

ファシリテーターの方にお話を聞いたところ、イワミ村田製作所の従業員人数が350人くらいであるのに対して出雲村田製作所はその10倍だそうです。

そのためリーダー研修をするにしても10回位に分割してやらなければならないとのこと。それに比べれば1回の研修でリーダーを全員参加で開催できるイワミ村田製作所の規模はちょうどいいようです。

経験的にも、同じ内容を複数回、別のスタッフでやるよりも一度にやって、全員で現場の空気感と結果を共有できることは大きなメリットです。


企業とコミュニティの共通点と相違点


今回の研修を見学してみて、いくつか「企業」と「コミュニティ」とで共通している点、異なる点があると感じました。

一点目は最初に書いたように、リーダー/人材育成という点では共通していると思います。ただ、違う点もやはりありました。それは、企業の場合「リーダー」という役職に期待する能力、資質、役割がある程度明確にされていますが、コミュニティではそのような“求める人材像”が明確になっていることの方が少ない点です。

二点目は、コミュニティ内部での年齢による志向などに対する差異。高齢化するとはいえコミュニティ内部にも若手はいます。しかし、若手のアイディアとコミュニティの中心層である60代70代の人たちとはうまくつながらないことが多々あります。良くするには変えていかなければならない。いや、この方法がベストなんだ、と。そのあたりの年齢による考え方の差異についての悩みというのはあるんですね。そこを乗り越える方法として、次のコミュニケーションがあります。

三点目はコミュニケーションの重要性。上司と部下との間にたつリーダーには、それぞれに対する丁寧な報告連絡相談が求められているようでした。それも形式的なものではなく、日常的に接している部下の様子なども含めて、どこか変わったことがないか悩みがないかといったことまでです。そうした変化を丁寧に見つけ、褒めながらお互いの信頼を構築することがコミュニケーションの基盤だと思います。

それはコミュニティでも重要なことです。と言うよりも案外コミュニティではおざなりにされているように思うこともしばしばあります。昔から知った仲だから、いつも話をしているから、というのですが実際には改まって真面目な話を突っ込んでしているかというとそうでもないし、第三者的に聞くと求めているものに食い違いがあったりということはよくあります。

WSの中である方が言ってました。
現場を歩けばいいというものではない。現場の変化に気づくかどうかが大事なんだ。
と。


世界と伍する企業の底力

今回リーダー研修を見学させてもらって感じたのは、さすが世界を相手に勝負している企業だなということ。
いろいろと現状分析した話などを聞かせてもらって、まだまだ組織力などを伸ばす余地があるようです。その部分を確かなものとするために、人材像を明確にしたり、今回のような研修機会を設けたりということは、会社としての継続性、次の世代の人材確保ということを組織的に取り組んでいる証左かと思います。

WSをやった効果としては、参加者の方の声として「実はみんなが同じようなことで悩んでいることがわかってほっとした」といったことがありました。
自分だけじゃない、という部分が共有できるのはこうした研修、WSの意義のひとつですね。

また、意外と「自分の中のリーダー像」と「会社が求めるリーダー像」との間にギャップがあると感じている方が多かったこと、「リーダー像がクリアになった」という声も興味深い結果でした。

その他、リーダーの方たちが悩んでいる部分は自分自身振り返っても当てはまるなーと感じながら聞かせてもらいました。

リーダーとして参加されていた人たちをみると、それぞれキャラクターが違っていておもしろかったです。

フセンの文字が読めないように画像加工しています



終わりに

ある程度組織としての目標や戦略が定まっている企業では、それぞれのポジションに求める人材像はクリアですよね。

その点がコミュニティとは大きく異なる点かなーと感じます。

では、コミュニティやNPOで求める人材像をどこまで明確にできるかというと、現状では多くの組織で難しいのではないかと思います。自治会等は基本的に年次計画もほとんど前年と同じ、3年後5年後の将来像は持っていないところが多い。ですから、そこに向かって必要な人材というものは描きようがありません。またNPOにおいても当座の人材で回すことに精いっぱいなところが多く、やはり中長期的に計画を立ててそれに必要な人材確保/配置という考え方はできていないところが多いと思います。

ただ、NPOは中長期計画は策定すべきだと思いますし、計画を持つことで現状で抱える課題のいくつかはクリアできると直感的ですが感じています。

他方コミュニティについては難しいと思います。とくに旧来の集落、自治会といった地縁コミュニティでは難しいでしょう。

では地域のコミュニティはどうすればいいのか。それは、ある一定の「テーマ」に基づいて結成されるテーマ型コミュニティをいくつか作ること、そのコミュニティの中で計画を持つことではないかと思います。

たとえば「子育て」や「コミュニティビジネス」、「若者の力を発揮」といったテーマが考えられます。

従来の地縁コミュニティはこれまでと同じような形で運営して、それではカバーできない部分をテーマ型コミュニティで取り組み、相互にコミュニケーションを取っておくということです。

ところで、個人的にはみちくさ日和のイワミ村田製作所プログラムには、ぜひ高校などの進路担当の先生方、ちょうど進路選択を迎える時期の子どもの親御さんに参加してほしいなと思います。
会社としての哲学や人材育成に関する話を聞けるし、社食も体験できるし、労働環境も見れます。


最後に、今回快く見学させていただいたイワミ村田製作所様にはお礼申し上げます。ありがとうございました。

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