2014年3月16日日曜日

年間5,000人を迎える谷笑楽校の現在


年度末も押し迫った3月15日。
島根県飯南町にある谷笑楽校を視察してきました。

谷笑楽校。
昭和3年に現校舎が建築されて以来、平成17年に閉校するまで1,500人以上の卒業生を輩出してきた伝統ある学校です(谷小学校自体は明治8年に開校)。
閉校した後の校舎利用を地域の交流拠点施設としてリスタートをきったのが平成22年。現在は年間で4,000~5,000人の視察等の訪問者を受け入れている施設となっています。

築約90年の木造校舎を利用した交流拠点に人が集まる仕組みとその背景、そしてもともとの地域の支え合いの仕組みについて伺ってきました。


地域支え合いのはじまり


谷笑楽校の運営は谷自治振興会が担っています。自治振興会が担っている地域の支え合い活動には大きく2つあります。
  1. スノーレンジャー
  2. 輸送活動

1.スノーレンジャー


谷地区は標高約270mに位置し、冬は積雪も多い地域です。雪が積もれば当然雪かきなどが必要になりますが、高齢化する地域ではお年寄り独居世帯も多く、重労働である雪かきは大きな課題です。
そこで、地域の有志17名が自ら寄付した上で、県の助成金を活用して除雪機2台を購入し、スノーレンジャー(ボランティアによる除雪隊)を結成しました。
*しまねいきいきファンド助成事業

除雪作業は、燃料代に当てるために1時間1,500円で実施しているそうで、特に高齢女性等からは感謝されることが多いようです。

2.輸送活動

輸送活動とは、近隣に買い物施設や病院などがあまりない地域である上、高齢化し自動車運転等も控えたいお年寄りの移動支援を目的とした活動です。
もともとは、公共交通も脆弱であり、幹線道路である国道54号までの接続が必要だという認識からスタートしたとのこと。
島根県は、無償運送なら輸送活動を認めるという仕組みを示しており、谷自治振興会の取り組みはこの枠組みに乗っかった仕組みとなっています。
島根県の枠組み:利用者負担は燃料費以内とし、その他経費は自治会費の中から負担することで無償輸送扱いとする

要するに、この輸送活動の利用者負担は200円で、それはすべて燃料費として処理されており、運転手の人件費は出てこないというものです。

課題認識としては、本来公共交通として移動支援を担うべき所を自治会/自治振興会が担っており、それでよいのかという点は持たれているようですし、行政にも働きかけはしていると仰っていました。
谷小学校の歴史が書き込まれている



「支え合い」を支える財政基盤


とまあ、地域の支え合いいわゆる地域福祉に関わる活動というものは「稼ぐ」部分じゃないですね。
かなりの部分をボランティア意識で維持されているなという印象です。

質疑では、財政基盤について伺いました。
主な財源としては、
  • 竹下総理時代に配布されたふるさと創生資金の一部活用
  • 町のコミュニティ助成金、
  • 谷笑楽校の指定管理
  • 視察料
  • 会費
などだということでした。

興味深いのは、ふるさと創生資金の活用です。
これは、つい先日大田市仁摩町で開催された講演会で聞いた小布施町でも出てきていました。
(そういえば、これについて書いてなかったなぁ)
小布施でも、ふるさと創生資金を使った結果、今のまちづくりの活動につながっているという話があり、全国に1億円をバラまいたとされるあの施策も、使い方次第であるという当然のことが事例として聞けたのは大きいです。

こうした自主財源に加えて、適宜助成金を獲得して資金調達を図っているとのことでした。


「攻め」の活動展開|交流事業


出て行くばかりの支え合いを継続するためにも、また新たにUIターン促進を図るためにも、「攻め」の事業も必要となります。
そこで、谷笑楽校として整備された拠点を活用して、 加工品開発販売や弁当づくり、サロンづくり、谷笑楽校同窓会の組織化などに取り組んでいます。

加工品開発販売

 

写真は、地域で比較的栽培されているユズを使った商品2種。
ゆずポン酢と、ユズのジュレ。

ポン酢は昼食でいただいたお弁当に使って試食しましたが、ユズの風味が濃い印象でした。

ジュレは、非常に透き通っていて見た目にも爽やかな香りとを味を想像できたので、とりあえず1個買ってみました。その後に急きょ試食できる形が整ったので、いただいたらビックリ。
想像していた味をいい意味で裏切ってくる、想像以上の爽やかさ。爽やかなんだけど甘みもしっかりしていて美味しかったです。勢いで2個め買いました。

このような地域資源を使った商品の場合、よくも悪くも容器やラベルデザインにあまり力を入れないのですが、こちらは容器にもラベルにも気を遣っているのがわかります。

特に容器はゆずポン酢のビンがいいですね。当初使っていたビンもありましたが、そちらはカドのない丸い形。だけど、こちらの新型のビンはカドを少し丸めただけでビンで、少しオシャレな雰囲気と高級まではいかないけど、上質な原料を使っていることをイメージさせるものだと感じました。

ユズのジュレはジュレの透明感を活かすためか、透明な部分が多いビンを採用されていて、ラベルも真ん中ではなく少しずらして貼っているんです。
この辺の商品に対する気遣いなんかは素晴らしいと思います。

ラベルは地域おこし協力隊として地域に住んでいる方がデザインのプロなので、さすがにいい感じのラベルになっていました。



お弁当「谷笑弁当」


昼食は、ジュレなども作っている地元の加工グループである「ゆず舟亭」の方が作られた弁当をいただきました。
これ、中身がおもしろくて、ユズを使った爽やかな炊き込みご飯があったり(左下のオレンジ色のご飯)、旬のふきのとうのテンプラ(下中)や、おそらくコゴミ、ゼンマイなど山菜(右下)もいろんな種類がありました。

まあ、こうしたお弁当はたいてい美味しいですよね。地元のお母さんたちが作っているので、だいたいハズレはないです。
こうした食を美味しいと感じられることが大事な感覚な気もします。

コンビニ弁当やハンバーガーなどがマズイとは思わないし、むしろ無性に食べたくなる時もありますが、やはり谷笑弁当のような食、地域で取れた山菜、野菜、米を使った食は美味しいです。
もしかしたら、この弁当の地元自給率は90%超かもしれないですね。


まとめ


決して潤沢とはいえない予算の中で、谷笑楽校の運営をしたり加工品開発販売を行ったり、視察受け入れを行ったり、スノーレンジャーや輸送活動など守りの活動を展開したりと多様な活動を展開されていることがよくわかりました。

普段から、谷笑楽校の前をよく通るので気にはなっていましたが、今回視察として訪問出来て良かったです。

会長の澤田さんの言葉も印象的で、苦労しながらもこの地に暮らすことを楽しもう、楽しめる地域にしようという思いが伝わりました。

あと、やはりデザインの力は大事だと思いました。
もちろん、良いものであることが大前提ではありますが、良いものを良いものとして認知してもらうためには、本質を磨きだすデザインは大事です。

谷自治振興会

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